コラム

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季刊誌つながり 循環器内科

【つながり】よく眠れていますか?

Author :東京Dタワーホスピタル 循環器内科 中山雅文

会議中に眠くて集中できなかったことはありませんか?
会議に興味がないわけではなく、睡眠の効率が悪いことが原因かもしれません。
このような睡眠障害を来す疾患の一つが睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS:サス)です。


睡眠時無呼吸症候群とは?
病気や事故、作業効率への影響

SASは睡眠中に呼吸が止まる、または弱くなる病気です︒呼吸が止まると体内の酸素が不足し無意識のうちに呼吸が再開します。1分間以上も呼吸が止まっている方もいらっしゃいますが、睡眠中のため本人は自覚なく、パートナーに指摘されるまで病気が見つからないことがほとんどです。
2003年の山陽新幹線のオーバーランが、SASによる影響だったと報じられ有名になりました。スペースシャトル(チャレンジャー号)爆発や、エクソンバルデス号座礁事故などにもSASが関与していたことが知られています。SASは︑日中の作業効率を低下させ、健常人と比較して交通事故が2.4倍高く、脳卒中3.5倍、心不全4.3倍、高血圧2.1倍、糖尿病2.3倍、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)2.5倍などの疾病を引き起こしやすくなると報告されています。[1]

日本の睡眠不足による経済的損失は、国民総生産(GDP)の2.92%にあたる1,380億ドル(約15兆円)に達し、調査対象5か国(アメリカ、ドイツ、イギリス、カナダ)の中で最も高くなっています。すでに、国土交通省が運輸業界に対して乗務前の睡眠状態確認を2018年から義務化するなど、睡眠状態の把握を通じた事故防止の動きが広がっています。

日本人7,051例を対象とした最近の調査では、専用の機器を用いた持続性陽圧呼吸療法(CPAP)の必要とされる中等症以上(AHI≧15)は、男性で4人に1人(23.7%)、閉経後女性で9.5%(閉経前女性1.5%)と報告され[2]、肥満傾向にある男性に多く、ピークは40~60代といわれています。しかし、現在SASの診断でCPAPで治療を受けられている日本人は約50万人で、まだ診断されず未治療の方が多いと推測されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状

SASは、睡眠中に繰り返し呼吸が停止することにより睡眠の質を低下させ、日中の過度な眠気や集中力の低下などを引き起こします。SASの症状には、大きく不規則ないびき、睡眠中の呼吸の一時停止、日中の異常な眠気、集中力低下、朝の頭痛など様々です。しかし、日中の眠気や疲労感は、忙しさやストレス、年齢のためなどと誤解され、睡眠障害を自覚する方は少ないとされています。SASは肥満の方に多い一方で、痩せていても、顎が小さい方や扁桃が肥大している方にも発症します。


診断方法、治療方法

SASは、小型の機器を用いた簡易検査で診断します。中等度以上の睡眠障害が疑われる場合には、精密検査を行います。1時間あたりの呼吸停止回数(AHI)、1回の呼吸停止の持続時間、血中酸素レベル、心拍数、体位毎の変化などを総合的に評価し、AHI≧20以上であればCPAP(持続陽圧呼吸療法)が推奨されます。


CPAPの適応であるにも関わらず(AHI≧20)、無治療の場合には9年後に脳卒中や心筋梗塞などで37%が死亡していると報告されています[3]。SASは適切な治療で、症状を改善できるだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを、SASを有しない方と同レベルまで引き下げられます。CPAP治療経験者からは、「寝起きに喉が痛くなくなり、熟睡でき、夜トイレに起きることがなくなった。安静時の心拍数が下がった。」など、健康状態改善と共に、家族からの苦情もなくなったという声もあります。

軽度~中等症の場合には、減量、睡眠時の体位の工夫、マウスピースでの下顎位置の矯正による気道開放などが効果的です。

SASの治療とビジネスパフォーマンスへの影響

睡眠不足や睡眠の質の低下は、仕事のパフォーマンス低下、事故やミスの誘発のみならず、生活習慣病やメンタル疾患につながります。

SASは、通常の健康診断では見つからない疾患ですが、東京Dタワーホスピタルでは、SASの保険診療での簡易検査、精密検査および、人間ドックでの簡易検査が可能です。

いつでも、ご相談ください。


参考文献

[1] Mokhlesi B, et, al. The effect of sex and age on the comorbidity burden of OSA: an observational analysis from a large nationwide US health claims database. Eur Respir J 2016;47(4):1162-9.

[2] Matsumoto T, et, al. Impact of sleep characteristics and obesity on diabetes and hypertension across genders and menopausal status: the Nagahama study. Sleep 2018;1;41(7)

[3] He J, et, al.  Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea. Experience in 385 male patients. Chest 1988;94(1):9-14.

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この記事を書いた人

中山 雅文

Masafumi Nakayama

専門分野 虚血性心疾患、循環器一般

2004年東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医大病院、戸田中央総合病院、岐阜ハートセンターで勤務。2020年には早稲田大学東京女子医大共同大学院を卒業し、医学に加え、生命医工学の2つの博士をもつ。2022年より東京Dタワーホスピタル循環器内科部長。認定医:日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会 循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会

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