コラム

Column

医療コラム 心臓血管外科

下肢静脈瘤とは

Author :東京Dタワーホスピタル心臓血管外科 秋山久美子


下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは?

下肢の静脈には、足から上半身に向かう静脈内の血液の逆流を防止する「静脈弁」という扉があります。そこが緩み、壊れた状態となると、血液が逆流します。足の静脈の血管内に血液が徐々に溜まり、静脈の血管が数珠状に膨らんでしまうことがあり、それを下肢静脈瘤といいます。
下肢静脈瘤は血管を扱う心臓血管外科医もしくは循環器内科医が診断・治療していく疾患です。

原因としては、加齢・長期間の立ち仕事・妊娠・出産・遺伝などがあります。




放っておくとどうなるか?

基本的に見た目の問題で、直接的には生命を脅かす病気ではありません。 血液の逆流により、下腿に血液が溜まるので、下肢のだるさ・むくみ・こむら返り・かゆみなどの症状が出現します。
更に悪化すると色素沈着・皮膚硬化・皮膚潰瘍などを認めます。 まれに静脈瘤の中に血栓をつくり、痛みを伴うことがあります(血栓性静脈炎)。


下肢静脈瘤の治療・手術について(保険診療)

当院では症状と各種検査の結果から、正しい診断と治療適応を判断し、患者様に十分な説明を行い、患者様の希望も含めて最も適切な治療方法を選択します。


当院では、血管を専門とする心臓血管外科専門医が治療にあたります。


①圧迫療法

弾性ストッキングによる圧迫で、静脈うっ滞症状を軽快させることができます。 うっ滞症状の軽減や悪化の予防に効果はあります。静脈弁の逆流が改善するわけではなく、根本的な治療ではありません。当院では、圧迫療法の専門医師、看護師がおり、適切なストッキングによる治療をご提案しています。


②伏在静脈抜去術(ストリッピング手術) 1970年代より施行

鼠径部と膝のあたりに2cmの切開を行い、大伏在静脈内にストリッパーというワイヤーを通し、静脈とワイヤーを糸で結んで固定します。 静脈全体に局所麻酔を行ったあと、ワイヤーを引っ張り、静脈を引き抜きます。 静脈がなくなるので、根治性は高いですが、側副血行などでの再発率は5年2~3%とゼロではありません。

症例によってはふくらはぎの静脈瘤はStab avulsion法(スタブ・アバルジョン法)で取り除きます。Stab avulsion法とは特殊な器具を使って2-3mmの傷から静脈瘤を取り除く方法です。傷は非常に小さいので、傷跡はあまり目立ちません。


③下肢静脈瘤血管内焼灼術(ラジオ波、レーザー治療) 2011年より保険適応

膝部の大伏在静脈を穿刺し、血管内にレーザーのカテーテルを通します。 静脈全体に局所麻酔を行い、レーザーの熱で血管を硬化させ、逆流を止めます。 再発率は5年で5%程度、レーザーの熱で血栓形成のリスクがあり、1週間後エコー検査を行います。 硬化した血管が残るため、つっぱり感を感じる方がいます(時間経過で改善します)。

参考資料: 下肢静脈瘤血管内焼灼術(ラジオ波)


④伏在静脈閉塞(接着)術(グルー治療) 2020年より保険適応

膝部の大伏在静脈より接着剤(シアノアクリレート)が内蔵されたカテーテルを通します。

接着剤を注入しつつ、血管を接着させ、逆流を止めます。 静脈全体の局所麻酔は不要ですが、接着剤によるアレルギーを起こす方がいます。 血栓形成のリスクがあり、1週間後、1ヶ月後エコー検査を行います。

参考資料: 伏在静脈閉塞(接着)術、グルー治療


下肢静脈瘤の各種治療の比較

それぞれの治療法にはメリットデメリットがあります。



下肢静脈瘤治療の流れ


一般的な手術の流れ(1泊2日)


受診をご希望される方へ


患者さんの状態をしっかり把握し、ご要望にあわせてベストな治療を行っていきます。

受診ご希望の方は、外来・診療予約よりご予約をお願い致します。

心臓血管外科のページはこちら

この記事を書いた人

秋山 久美子 Kumiko Akiyama

専門分野 成人心臓血管外科全般

成人心臓、血管外科などを専門としております。丁寧で安全な医療を提供できるよう、日々研鑽を積み、患者さんのご希望に沿った治療を心がけています。ご心配なことがあれば、いつでもご相談ください。
所属学会 日本外科学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本集中治療学会、日本循環器学会、日本脈管学会

東京Dタワーホスピタル概要

先進的な医療設備

全室個室

〒135−0061
東京都江東区豊洲6丁目4番20号 Dタワー豊洲1階・3−5階
TEL:03−6910−1722 / MAIL:info@tdhospital.jp
ACCESS:新交通ゆりかもめ「市場前」駅より徒歩2分

脳神経外科、循環器内科、心臓血管外科、整形外科、麻酔科、健診・専門ドック

病気・手術・治療のお問い合わせはこちら


おすすめ記事

ページトップへ